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(1)組織の不思議-定常流的実在

「組織」とは摩訶不思議なものである。

デュフォーの作品として知られる 「ロビンソン漂流記」は、絶海の孤島に取り残されていた ロビンソンクルーソーの物語である。 モデルとなった実在のロビンソンは「アレクサンダー・セルカーク」 という船乗りだったと歴史家は指摘している。

デュフォーは小説「ロビンソン漂流記」で、 社会なしに人は生きてゆけるかと言う思考実験を試みたといわれている。 ロビンソンクルーソーは、無人島で工夫を凝らして生き延びることに成功するが、 元の社会に戻ることに焦がれて、沖合いを遠く通り過ぎてゆく帆船に向かって叫び、 シャツをくくりつけた棒を激しく振り続けてむなしく何年もの日々を送るが、 ついに近くを航行する船に発見されて、ハッピー・エンドを迎える。

この思考実験の結果にデュフォー自身は満足しなかったかも知れないといわれているが、 結果は、おおむね人は社会なしには生きてゆけないことを示している。 言い換えれば、人はおおむね組織なしには生きてゆけないのである。


ところで、一人の人は多数の組織に属することが出来る。 たとえば、一人の人は家族という組織と会社と釣り同好会と町会と、、、、 場合によっては政党や檀家組織などの宗教的組織などにも参加している。 すなわち、同時にたくさんの組織の構成メンバーになることが出来る。

また、ある組織はそれを構成する人員が入れ替わってもその組織である。 新入社員が入って、ある社員が退職するのは、ありふれた光景である。 人が変わっても会社Aはその会社Aである。

組織とは、マンジュウの詰め合わせの箱のように考えている者がいるが、 まるで違うのである。 マンジュウの詰め合わせの箱ならば、 1つの箱に入っているあるマンジュウを同時に別の箱には入れない。 また、組織を岩や建物のように考えるものがいるが、 岩を構成する各部分が入れ替わったり、 柱や床が始終入れ替わったりしてしまうとすれば、どうだろう。 ありえないことである。

組織とは、水面に浮かぶ波のような「定常流的な実在」である。 たくさんの波が水面を交錯するとき、一つの水の分子は、 交錯するどの波にも属しているが、 次の瞬間には、別の水分子に置き換えられているのである。 それでいて、波は波としてしっかりと漂いながら実在している。

定常流的な実在という一見とらえどころのない組織の本質を理解しなければ、 組織の運営は出来ない。


  • 金銭や地位、腕力や言葉の暴力によって抑圧と支配を完成し 反抗を許さず人々を思い通り動かそうとしても、 やがて人はスルリとその手を抜けていってしまう。 人はどの組織に属することも自由なのである。 抑圧と支配が成功するのは軍隊においてだけである (一部、学校教育においても成功してきた不幸な歴史があるが)。
  • 人の利己的思惑にのみ迎合して、これを掻き立てるようにすれば、 個別のたくさんの要求にリーダーはたちまち持ちこたえきれなくなって破綻する。 組織のモラルは低下して分解する。
  • 人を欺いて本来の目的を隠して人々を導いても、 昔ならばいざしも、情報化社会の今日ではその意図がたちまちにして露見してしまう。 情報を隠して人を操ることは、今の社会ではできない。
  • リーダの意図は正しくとも、その意図が理解と支持を集めていなければ、 人々は動かない。ラクダを水辺につれてゆくことは出来ても、 ラクダに水を飲ませることは神ならぬ身にはできない、のである。

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