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(4)簡単ではないイノベーション(改革) 応援する 

「究極の目標が正しい」かどうかを組織のメンバーがいつも点検でき、 意見を述べられるようになっていない組織は解体する。 どんなに高邁な究極の目標が掲げられていても、現状とかけ離れていれば、 忘れられてしまうだろう。 「究極の目標が正しい」かどうかを 組織のメンバーがいつも点検できるようになっていれば、 組織のメンバーは、その目標に身も心も殉ずる心構えが出来ているはずである。


「学習する組織」であっても、それぞれの組織には固有の学習伝播速度がある。 学習伝播速度以上の速度で組織内に学習を進めようとすると、 組織は分裂し、聞く耳を持たなくなる。 それどころか別の分派がイノベーションに反対して、大抵抗を試みるようになる。 抵抗勢力の登場である。

抵抗勢力は、自分たちは間違っていると思っているのではない。 抵抗することが正義であると考えているのである。 組織内が分裂すれば、それまで以上に学習伝播速度は失われてしまう。 むしろ、新しい考え方の説明は、抵抗勢力を勢いづかせるという 逆効果さえ生まれてくるのである。

そして、不幸なことに抵抗勢力は、革新勢力よりも小さなエネルギーで、 多くの味方を得ることが多いので、 ときとして(抵抗勢力は)勝利を収めるのである。

組織内の仕事は、始めは企画され、手本が示されて、説明がされて、 実際にやってみて、次第に人々がなれてゆくことによって習慣化し、 意識しないでもやってゆけるようになる。 習慣化しない限り、仕事の効率は悪いし、担当する人々の疲労は大きい。 作業が習慣化すれば、仕事の進め方についての考え方も無意識の内に肯定され、 他の批判を 受け入れがたくしているはずである。

イノベーションの勢力は、はじめは組織内では小さな勢力である。 大きな勢力は旧守勢力である。 旧守勢力は、意識して旧守勢力となっているのではない。 習慣と仕事の効率のために旧来のやり方を守っているのである。

仕事の効率は、多くの場合、どんな組織でも美徳である。 イノベーションの勢力が何かを言い始めれば、美徳をけなされたと感じて、 自らのモラルに架けて反撃に転ずるのである。 正義感に駆られているので、始末に終えないのである。


イノベーションは、メタ組織やバリューネットワークに押し戻される。 万一組織内の改革に成功し、 イノベーションに乗り出すことができるようになったとしても、 たいていの場合、従来のメタ組織の利益を損ない、 現在のバリューネットワークが受け入れられない変化である。 つまり、旧社会の秩序を損ない、業界の利益を損なう行為となる。

イノベーションはメタ組織やバリューネットワークによって押し戻されるのである。 イノベーションがメタ組織やバリューネットワークによって押し戻されれば、 組織内の抵抗勢力は勢いづく。 組織分裂と対立抗争は組織外と絡んで悲惨な状況を呈するようになる。


ここで、トリムタブについて述べておこう。 早くカーブを切らなければ岸壁に衝突してしまうことが分かっていても、 巨大なタンカーはそう簡単に舵を切ることが出来ない。 ましてや、船長が「おも舵一杯!」と叫んでいるのに、 船員たちは、昔教えられたとおり、舵をまっすぐに固定したまま、動こうとしないのだ。

タンカーはやがて岸壁に衝突して破綻するのである。 多数の船員が納得するまで待たなければならない船員組織は、 巨大なタンカーにはむかないのである。

タンカーの舵を切るには、トリムタブという仕掛けが存在する。 トリムタブはいわば「舵の舵」で、本来の舵とは逆向きの力を発生させるタブで、 本来の舵の先端につけられる。

トリムタブは大きな舵とは違って小さくて水の抵抗が小さいので、 小さな力で動かすことが出来る。 トリムタブがあるかたむきを持つと、 これが先端につけられている本来の舵にはトリムタブとは反対向き、 すなわち、本来傾けるべき方向に舵が回る。

トリムタブは舵の先端についているのであるからテコの原理で 小さな力で大きな力が必要な舵を回すのである。 このようにして、トリムタブは、 巨大なタンカーなどの大型船舶を小さな力で向きを変えることが出来る仕掛けである。

勘所を知っていれば、トリムタブのように、 組織をたくみに動かすことも出来るはずである。


組織の中のthought leaderの考えにメンバーの大半が共鳴でき、 新しい活動目的を直ちに学習できる能力が組織のメンバーにあっても、 リーダの方針が、時宜にあっていなかったり、組織の体力に合わない場合は、 たちまちにしてイノベーションに失敗する。

だからこそ強力なリーダが必要という考え方もあるが、 強力なリーダは必ずいつかは失敗する。他人の意見が聞けなくなったり、 組織のメンバーが間違った方針についても盲目的にしたがってしまう 危険がともなうのである。

究極の目的が組織のメンバーに十分に理解されていれば、当面の目的は絞られてくる。 環境理解と手に入る手段方法を考えれば、 当面の活動目的はおのずと分かるというものである。 リーダはその案を示さなければならないが、 いつでもスタッフの意見を取り入れて訂正する勇気がなければならない。 逆に言えば、いつでもスタッフの意見がリーダに伝えられる仕組みが必要である。


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