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 本棚を整理していたら,大学時代のクラス雑誌『じぇいおめが』が出てきて"工場実習だより"を投稿してありました。うん十年前の記録です。4年の夏休みに工業都市川崎に出てきて1か月某電気メーカーの工場附置研究所で実習しています。

 工場実習は、今で云うインターンシップです。夏休みなどに1か月も企業で働き、現場の仕事を体験するのです。自分がそのような職場で勤まるかどうか試してみるよい機会です。企業に取っても採用できるか学生の仕事ぶりを観察できます。素人を指導するコストはかかりますが、見学や面接では分らない仕事のやる気など学生と企業のマッチングをとるに効果的な双方にとってよい機会です。

 単純作業の多いアルバイトは働いて賃金を貰うお金を稼ぐ場です。工場実習は稼ぎでなく、社会勉強の場です。出てきた実習便りを読むと、随分勝手なことを云いたい放題で、恥ずかしくなりますが、以下に紹介します。

1。実習の始めに北大から鹿児島大まで全国からの実習生数十名に対し工場長から挨拶が有った。原文のママ記すと『工場長の言葉で心に残ったのは、日本の技術は外国のそれに追随している状態であり、我が国の技術水準を高めるために若い諸君に期待する所が大きい。この実習期間中には、我国の電気工業の現況を、局限された面からではあるが、体験を通じて認識して頂きたい、ということでした。』今思うと、1回の実習で電気工業の現状など認識できる訳はないと思いますが,実習しない場合の体験ゼロと比較すると得たものはきわめて大きかったことでしょう。従業員寮に泊まって1か月生活したのですから。

2。指導員は、4年先輩に当たるT氏で当時はアナログ計算機の研究者だった。普段は講義漬けの生活で、計算機など、以下原文『見たことはもちろん聞いたことも有りませんというと、早速計算機室に案内された。そしてそれに関する技術報告、雑誌論文等を与えられて目下ねじり鉢巻です。こんなことになるのなら実習内容を問い合わせて準備してくればよかったと反省しています。』注。若い時も今も反省というか、後悔というかやっていることは同じで進歩がありません。

3。『上方を五百キロも離れた関東まで来ると、。。。実家のことも、もはやよその国の出来事としてしか感ぜられません。ここは、我国の政治センター東京まで国電で30分。通勤者、小売商人の庶民的な生活のにおいがムンムンしている街です。近頃風呂へ出掛けた時などとんだ処へ来てしまった。ここでは僕はStrangerなのだと感じることがあります。めまぐるしい日々、狭い道路をバスがひっきりなしに通っています。ひろすはがんも、ざるそばはもりと云わなければ通用しない処なのです。』注。箱根を越えて関東は初めてでした。
 『そして舌をかみそうな東京弁と東北のズーズー弁が入り乱れています。ああ、関西が恋しくなった。関西には千年の伝統があるが、東京には非情の文明だけがある。わずか三百年の江戸町人文化などはかすかな存在だ。現在の東京は混沌以外の何ものでもありません。』注。三つ子の魂百まで、というか進歩が有りません。今もここに異文化体感などと書いているのが気恥ずかしくなります。

4。仲間になった実習生と付き合って、原文『そして時々大学のことを話し合うのですが,よそは教科書をほとんどの科目で使っていると聞きました。そして相当しぼられているらしい。前者は望ましい傾向ですが,後者は望ましくない傾向です。』

5。原文『実習は計算機の特殊演算要素を試作し、それを使って境界値問題を計算する所まで来ました。帰ってすぐにT氏に礼状を出した所”今年の実習は意識的に面倒を見なかったので、申し訳なく思っています。しかし学生実験でお膳立てのできた測定に馴れていた所が、自分でアレンジして実験をやる経験を得られたこと、将来の役に立つのではないかと思います”という意味の返事を頂きました。』大満足で京都に戻ったことを今も覚えています。


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