コの業界のオキテ > 第6章 落ちこぼれ > 学歴が何になる


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学歴を評価の対象にしない会社が、ほんのわずかだが出てきた。それでも、まだ入社するまでは、もっとも重要な採用基準になっている。

ところで、コンピュータは変化が激しい。導入したコンピュータも数年すれば「ゴミ」になる。当然、古いコンピュータの知識など、数年経てば、年寄のぼやきの材料くらいにしかならない。大学や専門学校でコンピュータを学び、情報処理試験にも合格しています、と言ったところで、評価の対象にしてはならない。知識は、あっと言う間に化石になってしまう。学校で習った知識がそのままいつまでも役に立つなど、万が一にもない世界である。

必要な能力は、新しい情報を読み取り、必要な知識をその都度身につけ、活用、運用することである。知識をいくら詰め込んでも、次から次へと腐っていく世界。記憶に頼る学習くらい役立たずはない。

今の日本の教育は、知識偏重も甚だしい。小学校はおろか、幼稚園のころから、どれだけ知識があるかを競うようなのばかりである。コンピュータの書籍や雑誌だって、アメリカの最新情報の紹介か、その延長上が極めて多い。しかし、コンピュータの世界は、次から次へと新しいことが起きる世界である。過去に正しかった方法も、時代と共に最悪の方法に変化していってしまう。

コンピュータの世界だって、基本の基本の基本みたいな根本原理的な部分は、ほとんど変化していない。しかし、性能が毎年倍増していく世界である。この性能アップのスピードは、あらゆる知識を古くしてしまう。

学校で学ぶべきことは、新しい知識の習得方法、習得の訓練であってくれなくてはならない。実用的な英語の能力は必須である。まあ、英語を話せ、とまでは言わなくても、コンピュータの取扱説明書が英語だったら駄目だ、というのではどうしようもない。もう、これだけでコンピュータの専門家というのは廃業にしてもらいたい。もし、大卒のくせにそんなことを言ったら、給与は高卒基準で支払えば十分である。

そもそも、現在世界で使用されているコンピュータを動かしている中心的な基本ソフトウェア(OS)を日本でサポートして来た人々が誰であったか知っているだろうか。学園紛争を起こした当事者だったり、大学も行かずぶらぶらとマイコンに明け暮れていた、どうしようもないと世間が評価していた人々が多い。まあ、私もそういう人間の一人であった。

実際、大学をみても、コンピュータを実際に良く知っているのは助手のレベルが非常に多い。場合によると、優秀な学生に、大学全体がコンピュータの面倒をみてもらっているのもざらである。

某国立大学を8年間かかって卒業したのがいる。なにしろ、毎日毎日コンピュータ関係の出版社のアルバイトなどに精出していたので、大学はおろか、家にも帰らない生活であったらしい。執筆したり、コンピュータを弄くり回すのに忙しかったのだろう。卒業できたことは、仲間からの電子メールで知ったくらいだ。

それだけではない。彼は、卒業後も、その国立大学のコンピュータシステムの調整に時々出かけていた。彼が8年もの間大学にいたのは、大学側が、彼を手放したくなかったからではとの、もっぱらの噂である。

彼は、日本を代表するコンピュータネットワーク技術者の一人である。

某国立大学の教授と話をしていた。 「今は、××がいるからコンピュータの調整もできるが、彼がいなくなると困るんだ」 と教授がこぼした。××とは、コンピュータ雑誌によく記事を書いたりしていた助手であるが、有力国立大学の場合、助手はあちこちの大学を移動する。しかし、コンピュータの面倒をきちんとみれる人がいなくなると、研究に重大な影響がでるのは明らかだが、講座制度のもとでは人の確保は甚だ難しい。

何も、これは、この研究室の教授だけの悩みではない。殆どの大学の教授達の悩みである。コンピュータを専門とする研究室はいいが、コンピュータも使わなければならない研究分野はコンピュータの専属スタッフを置くゆとりなどない。

コンピュータの世界で、もっとも不要な物は、過去の化石となった知識である。こんな物、邪魔にしかならない。学歴や資格で判断できるのは、そのような過去の知識の量くらいでしかない。語学力、文章表現力、情報収集力、理解力、判断力、さらには交渉力などが一番必要になる。ペーパーテストで判断できるようなものは殆どない。

ただし、一般的に言って、高学歴の人間の方が、それらの力も優れていることは間違いない。しかし、個人差は甚だしい。大卒で、ろくに文章も書けないのを見ていると、とても高等教育を修めた人間とは思えない。


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